気候変動への取り組み(TCFD)
TCFDへの賛同
パーク24グループは、脱炭素社会の早期実現に向けて、気候変動への対応を重要な経営課題と認識しています。
2021年12月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」へ賛同を表明し、TCFDが提言する情報開示フレームワーク
(気候変動のリスク・機会に関するガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標)に沿った開示を行っています。
今後、シナリオ分析結果を踏まえた、気候変動に関するガバナンスや事業戦略の更なる強化を目指すとともに、情報開示の拡充を進めてまいります。
TCFD提言に基づく情報開示
ガバナンス
ガバナンス体制
当社グループは、気候変動を含む環境・社会に係る機会およびリスクへの対応方針・目標と進捗状況については取締役会で定期的に監督しています。また、気候変動を含む事業リスクについては、当社グループのリスク管理の一環として、主にリスク管理委員会で監督します。
サステナビリティ委員会は、環境・社会課題の解決に向けたサステナビリティ方針や戦略の策定、目標とすべき指標等について審議および設定を行い、グループ横断的な取組みを遂行します。進捗状況については、取締役会に適宜報告や提言を行っています。同委員会は、当社役員を委員長とし、委員はその目的に照らし、取締役会が適切と認めて選任したメンバーで構成されています。
リスク管理委員会は、全社的なリスク管理体制として、代表取締役及び当社グループ各社の取締役をもって構成しています。リスク管理最高責任者は代表取締役が務めており、リスクを特定して評価し、予め影響を回避または最小化するための活動と、役員会監督の下、定期的な報告や提言を行っています。
気候変動に関する目標とその進捗状況については、当社の経営企画部門が主管となり、サステナビリティ委員会とリスク管理委員会、グループ各社と連携することで推進します。
役員報酬へのESG指標の導入
当社グループは、中長期的に目指したい姿を実現し、持続的に事業成長をしていくためには、株主をはじめとするステークホルダーの皆様と目線を合わせ、より合理的で透明性の高い報酬制度が必要であると認識しています。
そのため、恒常的な長期インセンティブとして譲渡制限付株式報酬制度を導入し、その評価指標としてESG評価指標を組み込みました。これにより、サステナビリティに関する取り組みをより強力に遂行することが可能になると考えています。
- 1)単年度においては、取締役が担当する職務、役割、責任および事業の利益規模等の要素を考慮し定めた報酬テーブルに基づき決定される報酬体系を基本報酬として導入しております。
- 2)短期インセンティブ(STI)は、役位に応じて設定された基準額に評価指標(連結営業利益および連結当期純利益)達成率に応じた支給倍率を乗じて算出しています。当該指標を選択した理由について、連結営業利益につきましては、為替・金利等の影響を受けない本業での利益として、本業での貢献を評価するためであり、連結当期純利益につきましては、株主利益に直結する最終利益として、株主利益への貢献を評価するためです。また、取締役の役割に応じて、定量的な評価指標(連結営業利益および連結当期純利益)に加えて、定性的な指標を用いて評価しています。
- 3)長期インセンティブ(LTI)は、譲渡制限付株式報酬制度を導入しております。譲渡制限期間につきましては、当社又は当社子会社の役職員の地位のうち当社の取締役会が予め定める地位を退任した直後の時点までの間と定め、株主総会で決議いただく付与上限数・上限金額の範囲内で、連結経常利益、ROIC、ESG指標を評価指標として、経営環境等を考慮した上で、譲渡制限付株式を付与いたします。
なお、ESG指標は、環境、社会、ガバナンスの観点から4つの指標で構成しており、環境についてはサステナビリティの中長期目標として掲げている「モビリティ車両の新 規導入車両はHV・EV比率を前年より高めるモビリティ車両の1km走行距離当たりCO2排出量は前期比3%削減」の達成度、社会については 従業員のエンゲージメント指数、ガバナンスについては外部評価機関のESG関連評価指数平均を用いています。
戦略 ー 前提条件とシナリオ設定
分析対象事業範囲と年度の特定
当社グループの営業利益の大半を占める駐車場事業国内とモビリティ事業の2事業を対象として分析を行いました。また、分析対象年度は2050年時点としました。
リスク重要度評価
将来の気候変動が当社グループの事業にもたらす影響については、外部機関の気候変動に関するレポート等を参考に、脱炭素社会への移行に伴うリスク・機会(政策/規制、業界/市場、技術)と気候変動に起因する物理リスク・機会(慢性、急性)について洗い出しを行い、分析対象事業との関連性が高いと想定される主要なリスク・機会項目を特定しました。
シナリオ・パラメータの設定
シナリオは、IPCCやIEAなど政府や国際機関が発行した将来予測に関するレポートなどを参考にし、1. 脱炭素シナリオ(1.5℃〜2℃シナリオ)と2. 温暖化シナリオ(2.7℃〜4℃シナリオ)を採用しました。
世界平均地上気温の変化
1. 脱炭素シナリオ(1.5℃〜2℃シナリオ)
2100年までの平均気温上昇が2℃未満に抑えられている世界
脱炭素に向けた規制や政策の強化がされ、気候変動への対策が進捗し、産業革命前の水準からの気温上昇が 1.5℃~2℃程度となるシナリオ。顧客の製品・サービスに対する志向が変化し、企業の気候変動対応が強く求められ、未対応の場合は、顧客流出やレピュテーションリスク上昇が発生するなど、移行リスクは高まると推測。一方、気候変動による災害の激甚化や増加が一定程度抑制されるなど、物理的リスクは相対的に低いと推測。
2. 温暖化シナリオ(2.7℃〜4℃シナリオ)
2100年までの平均気温上昇が4℃上昇する世界
気候変動対策が十分になされず、産業革命前の水準からの気温上昇が 4℃程度まで上昇するシナリオ。自然災害の激甚化、海面上昇や異常気象の増加が想定されるなど、物理的リスクは高まると想定。この影響を受け、BCP対応が優れた製品・サービスの競争力は高まるものと思料。一方、政府による規制強化がなされないなど、移行リスクは低いと推測。
- IPCC「第5次評価報告書」
- UNEP 「The Emissions Gap Report 2015」
- IPCC 「Global Warming of 1.5°C」
- IEA「Energy Technology Perspectives 2017」
- IEA「World Energy Outlook」
- 国土交通省「治水経済マニュアル(令和2年4月版)」
- 気候変動を踏まえた治水計画に係る技術検討会「気候変動を踏まえた治水計画のあり方 提言」 (2019)
シナリオ・パラメータの設定に用いたレポート出所
戦略 ー シナリオ分析結果①
1. 脱炭素シナリオ
要約
脱炭素シナリオにおいては、政府が掲げる電気自動車目標が温暖化シナリオと比較して高く、EV関連費用として車両にかかる導入コストは増加し、また、政府目標に対応したEV以外の車両については利用の低下が想定されます。当該リスクについては、早期に車両の入れ替えを行うことで極小化し、市場での競争力を維持し、顧客からの信頼を獲得できると考えています。
物理的リスクについては、現状と比較すると異常気象の激甚化が進むと想定されますが、温暖化シナリオと比較すると一定程度インパクトが緩和され、かつリスクを極小化するための方策を実施していることから、仮に災害が発生した場合においても、被害想定額は僅少であると想定します。
機会としては、モビリティ車両の駆動にかかる費用(現在の燃料費相当)の低減が見込まれること、またEV充電設備の充実化により電気供給事業者としてサービスを展開することで売上が増加することを想定しています。
2. 温暖化シナリオ
要約
温暖化シナリオにおいては、政府目標に対するEV対応についてGHG排出ゼロに関する技術が脱炭素シナリオと比較して普及せず、コストの低減が見込めないことから、対応コストは一定程度増加すると考えています。
また、物理的リスクが高まることが想定され、自然災害(洪水等)による被害額は微小ながら脱炭素シナリオよりも大きくなりますが、脱炭素シナリオと同じく、被害想定額は僅少と想定されます。
機会としては、脱炭素シナリオと比較して、政府や法規制が厳格化されず、移行リスクに関する対応コストは相対的に低減されると想定します。
戦略 ー シナリオ分析結果②
事業別の影響度評価
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事業 | タイプ | 大分類 | 小分類 | インパクト概要 (リスク・機会) |
発現時期 | インパクト | |
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脱炭素 | 温暖化 | ||||||
駐車場 | 移行 | 技術 | 次世代技術の進展 | EVの普及に伴い駐車場で充電器の整備が必要になり、設備投資コストが増加する。 | 中〜長期 | 大 | 中 |
EV充電器の充実化により、電気供給事業者としてサービスを展開することで売上が増加する。 | 中〜長期 | 大 | 中 | ||||
物理 | 急性 | 異常気象の激甚化 | 被災した場合、営業日数や利用客の減少により、売上が減少する。 | 中〜長期 | 小 | 中 | |
物的損害が発生した場合、駐車場設備復旧にかかる費用が全額自社負担となる。 | 中〜長期 | 小 | 中 | ||||
モビリティ | 移行 | 政策/規制 | 炭素税導入に伴う課税額 | 炭素税が導入され、事業を運営するための炭素税の発生が予想され、操業コストが増加する。 | 中〜長期 | 小 | 小 |
業界/市場 | エネルギーの需要変化等 | 燃料価格の高騰により、モビリティサービスの運営コストが増加する。 | 中〜長期 | 大 | 大 | ||
顧客・市場の変化 | 外部環境の変化や消費者の意識向上により、EV導入に伴う車両投資が発生する。 | 中〜長期 | 大 | 大 | |||
技術 | 次世代技術の進展 | EVの普及・拡大に伴いEVシフトが求められ、EV固有の管理コストが発生する。 | 中〜長期 | 中 | 小 | ||
物理 | 急性 | 異常気象の激甚化 | 被災した場合、営業日数や利用客の減少により、売上が減少する。 | 中〜長期 | 小 | 小 | |
車両資産が浸水することによって修理・再調達にかかる費用が発生する。 | 中〜長期 | 中 | 中 |
シナリオ分析を踏まえた戦略・取り組み
当社グループは、2021年12月にサステナビリティに関する中長期目標を公表しました。気候変動(環境)に関する目標も包含しており、目標に沿った取り組みを推進しています。今回のリスク評価および事業インパクト評価の結果に基づき、リスクについては回避、緩和に向けた取り組みを促進、機会については積極的な事業展開を検討することで、各事業における戦略のレジリエンスの向上を目指していきます。
駐車場事業においては、EVの普及動向に注視しながら、駐車場へのEV充電器の設置を推進していきます。導入に際しては、充電インフラに関する補助金の活用や関連企業との連携等も検討していきます。また、物理リスクに関しては、駐車場の軽装備化(フラップレス等)を進めることで、被害の最小化と復旧の迅速化を図ります。
モビリティ事業においては、EVの普及動向に注視しながら、モビリティサービスへのEV導入を推進していきます。導入に際しては、EVに関する補助金の活用等も検討していきます。エネルギー需要の変化等に関するリスクについては、再生可能エネルギー電力や同証書の調達を検討していきます。
なお、駐車場事業およびモビリティ事業に共通する物理リスクの異常気象の激甚化については、両事業ともに早期復旧に向けたBCPの強化を進めてまいります。
リスク管理
リスク管理体制
当社グループは、取締役会により指名された法務コンプライアンス部門の責任者を委員長とし、グループ会社の役職員より構成されるリスク管理委員会を設置しています。リスク管理委員会は、グループ経営に影響を及ぼす可能性のある気候変動関連問題を含むリスクを一覧化したリスクマップを作成し、重要リスクについては、モニタリングを実施し、定期的に特定リスクの追加・変更、評価、優先ランク付けの見直し等実施の上、その結果を定期的に3ヶ月に1度、取締役会に報告を行うことで、これらリスクの対処・予防にあたります。
グループ経営に影響を及ぼす可能性のあるリスクを未然に防止または損失を低減し、リスクが顕在化した際には、その影響の最小化を図ることにより、事業の安定的な継続と企業価値の向上を実現するために重要な役割を担っています。
気候変動に関するリスクについて
気候変動リスクについては、リスク管理委員会、サステナビリティ委員会及びパーク24経営企画部門が連携して、リスクの極小化と機会獲得に向けた各種方針・戦略の策定、取り組みのモニタリングに関する管理を行う体制となっています。
また、定期的な気候変動関連リスク・機会の見直しはリスク管理委員会を中心に実施します。
リスク管理の具体的な方策として、マテリアリティを軸に、サステナビリティに関する中長期的目標の達成状況をモニタリングすることにより、気候変動を始めとするサステナビリティに関するリスク管理体制の強化に寄与するものと考えております。
指標と目標
指標と目標設定
当社グループは、2021年12月にパーク24グループのマテリアリティを特定すると同時に、サステナビリティに関する中長期目標を設定いたしました。
そのうち、気候変動(環境)に関する目標は以下のとおりです。
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マテリアリティ | テーマ | 2030年の中長期目標または方針 |
---|---|---|
持続可能な地球環境への貢献 | 環境負荷低減への貢献 |
|
資源の有効利用 |
|
国内事業におけるCO2排出量
2021年10月期は、新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)の拡大により交通量が減少し、駐車場サービスとモビリティサービスの稼働が大きく低下しました。2022年10月期はコロナの影響が縮小し各サービスの稼働が回復したこと、また2023年10月期は、各サービスにおける規模拡大が進んだこと等から、CO2排出量も増加しました。一方、モビリティ事業においては、保有車両における電動車(HV+EV)の割合が増加したことで、車両の1km走行距離当たりCO2排出量は継続的に減少しています。
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(tCO2)
区分 | 主なCO2排出内容 | 2021年10月期 | 2022年10月期 | 2023年10月期 | 前期比 |
---|---|---|---|---|---|
Scope1 | 営業、管理・メンテナンス、モビリティ車両のガソリン消費 | 139,059 | 174,778 | 200,435 | 114.7% |
Scope2 | 駐車場・事業所の電力消費 | 31,022 | 32,518 | 36,434 | 112.0% |
Scope1+2 合計 | ー | 170,080 | 207,296 | 236,869 | 114.3% |
- ※Scope1およびScope2は、国内グループ会社の合計値
- ※Scope1には、お客様負担のガソリン使用量(レンタカー)を含んで算定
- ※2022年10月期のScope1、Scope2データは、数値精緻化の観点から集計方法を変更
- ※Scope3は、当社グループ(国内)のCO2排出量の把握に向け対応を推進。統合報告書2024から開示予定
TCFD提言への今後の取り組み
今回は、国内事業をスコープとしたシナリオ分析を実施しました。分析により、今後の物理的リスクに対しては一定のレジリエンスがあるものの、移行リスクについては、エネルギー動向・EV普及動向など、より一層の注視が必要であることが分かりました。今後は、機会に関する整理とともに更なる分析の深化を実施し、リスク低減・回避のための取り組みの検討を実行していきます。また、対象事業を拡大し、リスク・機会の定量的な把握を進め、中長期計画への反映をしていくことにより、当社グループが掲げるグループ理念「時代に応える、時代を先取る快適さを実現する。」のもと、モビリティ・交通インフラサービス企業として、駐車場事業およびモビリティ事業の成長を通じて、持続可能な地球環境や社会を実現していきます。